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2016年中部建築賞『西伊豆の家』

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「©FOTOTECA」


 シャープな軒先深い屋根庇と、コンクリート打ち放しの水平線が、透明なガラスに囲まれたファサードと相まって、中空に浮いたような感じの外観は美しく、納得できる。
 5年にわたる長い設計期間を通じ、「四季の変化、一日の時の移ろいを体感しながら、自然景観とのマッチングを考え続けた。」という設計者の言葉に、「思い入れ深く、心が形に表れている。」と感ずることができた。
 平面計画は富士の眺めと、海と空、非日常の景色を最大限に生かすべく部屋の配置がなされ、水廻り等は日常的使用に十分に耐えうる的確な機能性を有し、伊豆・戸田の大自然に向けて、空間を解き放つように瀟洒(しょうしゃ)なこの建物は在る。
 特に寝室付きの外部バルコニーは、先端に仕込まれ、普段は全開放しているガラス戸と網戸を引き出すと、緩衝空間として、内部縁側にも虫除けの自然通風空間にもなる設えは気が利いていてありがたい。

(増澤 信一郎)

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